人手不足が深刻化すると言われる中、離職率を改善する必要に迫られている会社は少なくありません。
カイラボでは2012年の創業以来、早期離職対策のコンサルティングを行っており、離職率を改善するために様々な方法で企業様を支援してきました。しかし、どんな方法が離職防止に効果的なのかは企業の状況によっても違います。
今回は企業を大きく4つのタイプに分けて、タイプ別に離職率改善のための対策をお伝えします。
本記事の執筆者
人手不足が深刻化すると言われる中、離職率を改善する必要に迫られている会社は少なくありません。
カイラボでは2012年の創業以来、早期離職対策のコンサルティングを行っており、離職率を改善するために様々な方法で企業様を支援してきました。しかし、どんな方法が離職防止に効果的なのかは企業の状況によっても違います。
今回は企業を大きく4つのタイプに分けて、タイプ別に離職率改善のための対策をお伝えします。
本記事の要約
今回は「ハーズバーグの二要因理論」を応用して企業を4つのタイプに分類し、それぞれのタイプ別の離職率改善お伝えします。
ハーズバーグの二要因理論は職場の満足度を決める要因として「動機づけ要因」と「衛生要因」の2つに分類しているのが大きな特徴です。ここではわかりやすく、動機づけ要因を「満足の要因」、衛生要因を「不満足の要因」と呼ぶことにします。
ハーズバーグの二要因理論については、こちらの記事で詳細を説明しています。
「満足の要因」は仕事のやりがいや達成感などを指します。一方、「不満足の要因」は、給与や福利厚生など職場環境に関することを指します。
「満足の要因」は、その要因が無い場合でも満足度がマイナスにはなりませんが、あるとプラスになります。つまり、ゼロからプラスの方向へ満足を積み上げていくのが、「満足の要因」です。
一方で、「不満足の要因」は、不足していると不満足の原因となりますが、どれだけ高めても一定の水準を超えると、それ以上満足度の向上には繋がらないのが特徴です。つまり、マイナスからどれだけゼロの方向に近づけられるかというのが「不満足の要因」です。
例えば、達成感ややりがい(満足の要因)が少なく給与(不満足の要因)が高い場合、不満は生まれにくいものの、その職場に満足はしていない状態になります。不満が出ていないから満足度の高い職場を言えるわけではないのです。
カイラボでは、ハーズバーグの二要因理論をもとに、縦軸に「満足の要因」、横軸に「不満足の要因」を置いて、企業を4つのタイプに分類しています。
「満足の要因」と「不満足の要因」の高低の掛け合わせで、企業は以下の4つに分けることが可能です。
1) 漆黒のブラック企業:「満足要因」と「不満足要因」どちらも低い企業
2)やりがい搾取企業:「満足要因」は高いものの、「不満足要因」が低い企業
3)ぬるま湯企業:「満足要因」は低いものの、「不満足要因」が高い企業
4)ホワイト企業:「満足要因」と「不満足要因」のどちらも高い企業
ここで一度、自社が今どのタイプに当たるのかを考えてみましょう。その上で、以下で解説するタイプ別の対策を読むことをお勧めします。
ここからは企業のタイプ別に対策をご紹介していきます。
「満足要因」と「不満足要因」のどちらも低いブラック企業の場合、まず優先すべきは法律の遵守です。そのうえで採用競合の企業と同程度か、それ以上の福利厚生の充実を図ります。
「不満足の要因」の一つである給与や残業代は法律で定められています。まずは最低限、法律を守れているかどうかを確認し、守れていない場合は改善していきましょう。
給与の水準は、ただ高ければ良いという訳ではありません。求職者の方から相対的にどう見えるかの視点が必要です。
・同じ地域、同じ業種の会社を参考にする
・採用競合の水準を参考にする
といった方法があります。採用競合とは、採用の際に競合となる企業です。扱っている商材は違っても、同じタイプの人が応募する会社があるので注意が必要です。
例えば、「人と関わる仕事がしたい」思考がある方は、小売業だけでなく、人材紹介や人材派遣業を受ける可能性もあります。学習塾のような教育領域の仕事を選ぶ方もいらっしゃるでしょう。
つまり、自社が小売業だからといって、小売企業の水準だけを参考にすればよいとは限りません。実は、求職者は小売企業以外にも履歴書を送っています。
しっかりと採用競合を見極め、給与や福利厚生を採用競合と同水準程度まで上げていく努力が大切です。
残業の削減や、完全週休二日制の導入なども対策の一つです。
勤務時間や営業日数について、法律は遵守していたとしても、他社と比べると休日日数が少ないというケースもあります。そのような場合、思い切って休日日数を増やすことも視野に入れてみましょう。
勤務時間や営業日数を減らすと売上が減少するのではと心配する方も多くいらっしゃいます。しかし、ほとんどの会社では、しっかりと業務改善を進めていけば、営業日数を減らした分程度の利益の確保は可能です。それよりも、休日日数を増やした上で、働きやすい環境を整えることが優先です。
やりがい楽手企業は社員の「満足の要因」が高く、「不満足の要因」が低い状態です。
やりがい搾取企業は、社員がやりがいや達成感を感じる良い企業文化を持っています。良い部分は大切にして残しつつ、不足している福利厚生(有給制度、育休・産休制度など)や職場環境面の充実を図ります。
その際に、会社のビジョンや理念を軸として「なぜこの制度を実施するのか」をしっかりメッセージとして伝えることが大切です。
進め方を誤ると、ただ「福利厚生が良くなった」「働きやすくなった」と感じるだけで、そこにぶら下がる社員が出始める恐れがあります。やりがいや達成感を大切にする本来の良い企業文化を損なわないように気を付けましょう。
中途半端な改革に終わると、「漆黒のブラック企業」に転落する恐れもあるので注意が必要です。
職場環境や福利厚生制度が充実した場合、管理職の方々が、新しく導入した制度に反対し制度を潰してしまうことがあります。そのような社員の方々は、良い企業文化の中で、これまでやりがいや達成感を大切にして育ってきたからです。
管理職や幹部社員に対しても、制度導入の背景をしっかりとしていきましょう。管理職の理解がないと、せっかく作った制度が利用されずに終わってしまいます。
ぬるま湯企業は給与、福利厚生、職場環境といった「不満足の要因」が高い一方、やりがいや達成感の「満足の要因」が低い企業です。
このタイプの企業は現状の充実した制度はしっかりと守ったまま、会社が進む方向性やビジョン、ミッションを改めて策定し、社員一人ひとりに浸透させていくことが大切です。
その際に、可能な限り多くの社員を巻き込むを意識してください。
こういった改革は大手術になりがちです。これまでぬるま湯状態の会社にぶら下がっていた社員の退職が続くこともあります。一時的に離職率が高まる可能性もありますが、それをどう捉えるのか、経営陣や人事がしっかりと判断をする必要があります。
景気の変動や業界構造の変化によっては、今の利益体質を維持できないかもしれません。その際には、現状の充実した福利厚生が守れなくなる可能性があります。
その場合、やりがいや達成感もなく、福利厚生の充実もない、単純なブラック企業に変貌してしまうかもしれません。今から次に向けた手を打つという覚悟で離職率の上昇を許容することも大切です。
ホワイト企業は、「満足要因」も「不満足要因」も高いケースです。
直近では大きな問題がないからこそ、5年後、10年後を見据えた、長期的な目線での施策が重要です。求職者から人気の高いGoogleが常に新しい施策を試しているのも、先を見据えた行動と言えるでしょう。Googleは、研修制度などの充実以外にも、最近ではマインドフルネスの導入などで知られています。
また、ホワイト企業であるがゆえに「ぶら下がりたいだけ」の人が入ってくる可能性もあります。入社時に、会社が大切にしていること、求職者が大切にしたいことをお互いに確認することが重要です。
4つのタイプ全てに共通して大切なのは、過去の成功体験に縛られず、愚直に離職率の改善を進めていくことです。
自社に合った対策をするためには、自社の状況を正しく把握し、何が不足しているのかを明らかにすることも大切です。
例えば、あるブラック企業がやりがいや達成感を大切にし、以前と比べて会社が成長した場合、それが会社にとっての成功体験となります。その結果、さらにやりがいや達成感を追求する方向に走ってしまいがちです。しかし、その段階で会社として不足しているのは「不満足要因」なので、離職歴の改善という観点では、進むべき道は「不満足要因」を高めることです。
「満足要因」と「不満足要因」の両方の観点から、自社に不足しているのはどの要素なのかを考えましょう。そして、重要なところにお金と時間をしっかりと投下し、働きやすい会社、そして働きがいのある会社を実現してください。