営業職は就活生にはあまり人気がないと言われており、文系学生のなかには営業職以外の職種に就きたいと思っている学生も相当数います。営業職が学生から抵抗感を持たれがちなことを踏まえ、企業側も営業職をコンサルティング営業やマーケティング担当と呼び換えている場合もあります。
今回は、私たちカイラボが早期離職コンサルティングや早期離職した方へのインタビューから得た知見を交えて、「営業職の早期離職率は高いのか?」「早期離職が起こるタイプ別の営業職」についてご紹介します。
人事や営業部門の管理職など営業職の早期離職について懸念されてる方は、早期離職対策を考える参考にしてみてください。
営業職の早期離職率は他職種よりも高い?公式データの事実
営業職の早期離職率は、他の職種と比較して高いのか。まずこの点について事実をお伝えすると、実は「統計的にはよくわかっていません」。
早期離職率に関する公式データは、厚生労働省が新入社員の就職後3年以内の離職率を「新規学卒者の離職状況」と題して集計・公開しています。
この厚生労働省の資料には、例えばIT業界や製造業など業種別の早期離職率のデータはあるのですが、職種別のデータはありません。そのため、公式データとして営業職と他の職種の早期離職率は比較することができないというのが事実です。
そこで、今回は私たちカイラボが発行しています早期離職白書のインタビューデータをもとに、業種別の早期離職率をお伝えします。
少し古いデータになりますが、「早期離職白書2013年」のなかでインタビューに答えて頂いた方々の職種の内訳は次の通りです。
- 営業・販売職:53%
- 事務職:20%
- 技術職:13%
- 専門職:13%
- その他:2%
営業・販売職が全体の約半数になりますが、このデータだけで営業職の早期離職率が高いとまでは言えません。職種別の早期離職率の比較の一例として参考としてください。
早期離職が起こる3タイプの営業職
ここから、「早期離職が起こるタイプ別の営業職」についてご紹介します。
営業職と一口に言っても、扱う商材や顧客の企業規模などにより早期離職に至る理由は異なると私たちは考えています。その営業職の違いを以下の3タイプに分けてみました。
- ノルマがきつい営業職
- 値引き合戦になってしまう営業職
- 大手企業のBtoB営業
それぞれの項目について、具体的な内容をご紹介します。
タイプ1.ノルマがきつい営業職
まず1つ目は「ノルマがきつい営業職」です。例えば、金融機関がノルマ達成のため、高齢者にきちんと金融商品の説明をせずに購入させたとして問題になりました。
大変なノルマを課せられた営業職の場合、私たちが早期離職の原因としてお伝えしている3つの理由のひとつ「存在承認の不足」に当たり、辞めていく傾向があります。存在承認とは、自分の存在や能力を、周囲が認めてくれているかを指します。人間関係や自分の評価が悪い場合、存在承認の不足につながります。
存在承認の不足につながっている例として、実際に私たちが耳にしたなかで以下のケースが挙げられます。
・証券会社で非常にきついノルマを課せられ、「売ってこい」「売れるまで帰ってくるな」と言われた
・人材系の企業で、「テレアポ規定の件数が取れるまでひたすら電話をしつづけろ」と言われ、達成しないと机を蹴られ罵声を浴びせられた
私たちのインタビューに対し「売らないと人権がなかった」と言っていた方がいましたが、このような状態では自分が会社にいる意味があるのかと感じ、存在承認の不足により辞めてしまう傾向があります。
もし、これまでノルマがきついような歴史があった企業であれば、この存在承認を見直してみるのが良いでしょう。
タイプ2.値引き合戦になってしまう営業職
続いて、「値引き合戦になってしまう営業職」です。扱っている商材が機能性などで競合他社と差別化ができておらず、価格競争になってしまう場合です。
このタイプでは、私たちが早期離職の原因としてお伝えしている3つの理由のひとつ「貢献実感の不足」により辞めていく傾向があると考えています。貢献実感とは、自分の働きが、社会・社内・お客様の役に立っていると実感できるかを指します。自分の仕事が誰かのためになっていると感じられない場合、貢献実感の不足につながります。
私たちがインタビューしたなかで、通信機器または電話やFAX、コピー機といった商材を扱っている会社の方がいました。実状として製品だけでは差別化が難しく、「弊社ならばここまで下げられます」と値引き合戦になってしまっていたそうです。同時に、自分の営業成績のため顧客単価を上げる目的で、顧客にとって本来必要ないオプションをつける提案をしなくてはいけない状況だったとのこと。
このような営業活動のなか「これは本当にお客様のためになるんだろうか?」と感じ、貢献実感の不足によって辞めてしまうというケースは私たちがインタビューしたなかで多く見られました。
タイプ3.大手企業のBtoB営業
3つ目の早期離職が起こる営業職のタイプは、「大手企業のBtoB営業」です。
このタイプの特徴として、大手企業なのである程度商材に力は高く、ブランド力もあります。また商材にもよりますが飛び込み営業で次々と契約が取れるものではないため、顧客と長く付き合いながら一緒に仕事をしてくという性質があります。
大手企業のBtoB営業の場合、私たちが早期離職の三大原因として挙げているうちの「成長予感の不足」によって辞めていく傾向があります。
成長予感とは、簡単に言えば「今の会社、仕事を続けることでなりたい自分になれるのかどうか?」です。「このままこの会社にいても目指す自分の姿にはなれないかもしれない」と感じた時、人は成長予感不足につながります。
大手企業のBtoB営業の場合、カイラボがこれまでおこなったインタビューの中では、以下の2つのケースで成長予感を感じにくいとこたえる方が多いです。
・「大手企業の看板があるからこの仕事ができている」ことへの後ろめたさ
・営業開始から納品までの期間が長く、仕事のスピード感が感じられない
「もっと早く成長したい」という気持ちに比べて自身の成長スピードや企業のスピード感がゆっくりすぎると感じてしまうようです。そのためスピーディーに仕事が動いていくベンチャー企業や、裁量権が多い外資系の企業へ転職する方々がインタビュー回答者の中にも多数いました。
営業職の早期離職対策は、組織文化・企業カラーの振り返りから
早期離職が起こる3つの営業職のタイプをご紹介しました。「営業職だから早期離職が起こる」のではなく、「会社の特徴や組織風土が営業職には反映されやすい」ために離職した理由が目立ちやすいのではないかと思います。
営業職は、他の部署よりも組織文化や会社のカラーが業務を通じて色濃く出る傾向があります。今回ご紹介した3タイプを参考に、「自社はどのタイプに当てはまっているだろうか」と考えたうえで、営業職ならではの特性に配慮しながら「自分の会社に足りないものは何か」を突き詰め早期離職対策を進めてみてください。