OJTとoff-JTの指導方法の違いと、OJTで注意すべき5つのポイント
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新入社員の育成についてOJTという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、そもそもOJTって何でしょうか?ある大学の先生は冗談で「お前が、自分でやれ、頼るな」の略ですなんて言っていたこともあります。日本ではOJTという名のもとに、新人育成や指導が現場に丸投げされてしまっていることもあります。
今回はOJTの本来の意味とともに、OJT実施時に注意すべき指導のポイントをお伝えします。
OJTの本来の意味とは?
OJTの本来の意味を考えるにあたっては、「off=JT」という言葉と一緒に考えるとわかりやすいと思います。
「off=JT」とは、「Off the Job Training (オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略語です。「Off the Job」なので、現場(職場)以外でのトレーニングのことを指します。一般的には座学の研修などが当てはまります。
off=JTの具体例をあげると以下のようなものがあります。
・マナーや電話対応などの研修を受ける
・会社の歴史や理念を学ぶ
・商品やサービスについて理解する
一方、OJTは「On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略ですので、「現場で実際に仕事をしながら」学んでいきます。
たとえば、営業職のOJTであれば
・先輩の営業についていき、実際に営業の手順を学ぶ
・先輩がお客様と対面する様子から営業トークを学ぶ
といった内容が当てはまります。
つまり、座学の研修などではなく「実際に現場に出て仕事のやり方などを学んでいく」学び方がOJTです。
OJTとoff=JTの違いとそれぞれの特徴
それでは、さらに「OJT」に対する理解を深めるためにoff=JTの違いを具体的にみていきましょう。
まず、「off=JT」には以下のような特徴があります
・研修用の教科書や資料がある
・知識習得型
・講師に教育や指導の専門的なスキルがある場合が多い
off=JTでは、研修用の教科書や資料があり、それに沿って進めていくという形をとります。つまり、体系だった知識がすでに教科書に書かれており、その知識を1から10までしっかりと学んでいくのがoff=JTの特徴です。
一方、OJTでは
・学ぶべき知識やスキルは現場によって異なる
・教科書などが用意されていないケースが多い
・教育を担当する方は基本的に教育の専門家ではなく、業務の専門家である
という特徴が挙げられます。
現場で実際に学ぶOJTでは、先輩や上司のと仕事を通じて学ぶという形をとるため、教科書などが用意されていないケースがほとんどです。この点が、OJTの難しさの一つであると言えるかもしれません。
OJTで注意すべき指導の5つのポイント
教材が用意されているわけでもなく、教育を担当する上司や先輩も教育の専門家ではないOJTの効果を高めるためには、いくつかのポイントをおさえておく必要があります。
ここでは、私たちカイラボが提供するOJT担当者向け研修でお伝えしている、OJTを成功させるための5つのポイントをご紹介します。
- 先入観を持ち過ぎない
- 相手の話をよく聞く(イメージは7:3)で聞く
- 自己開示してほしいときはこちらから自己開示する
- コミュニケーションは量よりも頻度を重視する
- 相手の可能性を信じる
1.先入観を持ち過ぎない
一つ目は、「先入観を持ちすぎない」ということです。
たとえば「最近の若い者はすぐにやめる」という先入観をもっている方がいます。実際はそんなことはなく、大卒新卒者の3年以内離職率はここ30年で大きく変化していません。高卒の3年以内離職率についてはむしろ低下傾向にあります。
上記のデータからも「最近の若い者はすぐにやめる」というのは、ただの先入観であることがわかるかと思います。
「今の若い人はすぐ辞める」という先入観を持ちすぎてしまうと、はじめから新卒社員を「忍耐力がない、堪え性がない」といった目でみてしまうことにもつながってしまい人物理解を阻害してしまうと私たちは考えています。
とはいえ、最近の若い社員がどのような環境や時代背景の中で育ってきたのかを知ることは大切です。どういった環境で幼少期や思春期を過ごしてきたのかについては知っておくと、相手を理解する手助けになります。
2.相手の話をよく聞く(イメージは7:3)で聞く
2つ目は「相手の話をよく聞く」ということです。
私たちは研修などの場面でOJT担当の方にお伝えする際には、新卒社員へのフィードバックの場面を例に挙げることが多いです。
新卒社員に対して一生懸命指導しようとするあまり、ついつい自分の考えなどを話しすぎてしまうOJTの担当者や先輩上司の話を企業研修などを通じて耳にします。
フィードバックの際の「聞く」と「話す」は、7:3くらいが望ましいと私たちは考えます。7割は相手の話を聞いて3割でフィードバックを返すというつもりで話を聞いてあげるのが大切です。そうすることで相手の理解度や考え方などを把握することができ、よりフィードバックの質も上がりますし、なにより相手も自分の思いや考えを伝えることができるので人間関係の構築にも繋がります。
3.自己開示してほしいときはこちらから自己開示する
「新人から色々なことを聞こうと思っても、本人が話をしてくれない」という悩みを相談してくるOJT担当者の方は非常に多いです。そのような悩みを持っている方は、相手に自己開示を求める前にまずは自分から自己開示をしてみましょう。
趣味の話をする場合であれば相手に「趣味はなに?」と聞く前に、自分から「自分は釣りが好きで、毎週釣りにいくんだけどさ、この間はさ—」と話してみてください。そのうえで「〇〇さんは、最近なにかハマってるものとかある??」と話すことで相手も話しやすくなります。
この点も先ほどの「相手の話をよく聞く」と関連しますが、「聞く」と「話す」は、7:3くらいが望ましいと私たちは考えます。
4.コミュニケーションは量よりも頻度を重視する
新卒社員とのコミュニケーションは、量よりも頻度を大切にすると信頼関係の構築に繋がります。
たとえば、2つの例で考えてみましょう。
A 月に一度、飲み会で2時間話す
B 毎日、5分間話す
この2つを比べた場合、後者の「毎日、5分間話す」の方が上司と後輩とが信頼関係を築けることが多いと私たちは考えます。時間に換算すると、「毎日5分」の方が全体的には少ないのですが、毎日会話をすることで相手の自己開示のしやすさは大きく変わりますし、相手の変化にも気付きやすいです。
良い人間関係を築くためにも、コミュニケーションは量より「頻度」を大切にしましょう。
5.相手の可能性を信じる
後輩を指導していると「なんでこんなことも出来ないんだ、なんでわからないんだ」と思うことがよくあると思います。そう感じた時に「こいつ、ダメなやつだな…」と諦めるのではなく
「この人はきっといいものを持っている、そのいいものを引き出せないかな?」と自分に問いかけてみてください。
そうすることで、今まで気づかなかった側面や本人の良さに気づくことがあるかもしれません。OJTを行なっていく上では、相手の可能性を信じることが大切です。
OJTを成功させるためには、寄り添いながら本人の気付きを促す
OJT実施時に注意すべき5つのポイントをご紹介してきました。今回ご紹介した5つのポイントは、意識して行動してみるだけでも変化がわかりやすいポイントですので、是非注意を向けて見てください。
最後にもう一つOJT実施時に気をつけてほしいことがあります。それは本人の気付きを促すことです。一方的に知識や情報を教えるだけならOff-JTの方が有効です。実務を通じた教育であるOJTの効果を最大化するには、実務の中でしか得られない気付きを促し、本人の中に知識や仕事の進め方のコツを定着させることが大切です。
OJTが失敗するケースとして、先輩上司からの一方的なフィードバックに対し新人がその場しのぎでわかったふりをするというケースです。フィードバックを行っても、本人がよく理解していなかったり腹落ちしていなければ、OJTの本来の目的を果たすことは難しくなります。
人間は人に言われたことよりも、自分で気付いたことの方が腹落ちしやすいものです。
そのために今回ご紹介した「フィードバックは7割話を聞いて3割話す」や「自分から自己開示をする」などを意識し、相手の可能性を信じてOJTを進めてみてください。