東京商工リサーチの調査によると、2019年上半期の人手不足倒産は過去最多になったそうです。多くの企業で人手不足が深刻化していますが、成長著しいIT業界で状況は同じです。早期離職対策を行う私たちカイラボのもとにも、IT業界からのご相談をいただく機会は多くなっています。採用も難しいIT業界において、せっかく採用して育てた社員が早期離職してしまうのは企業にとっての痛手も非常に大きくなってしまいます。
そこで今回は、IT業界の早期離職の現状、理由、対策についてお伝えします。
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東京商工リサーチの調査によると、2019年上半期の人手不足倒産は過去最多になったそうです。多くの企業で人手不足が深刻化していますが、成長著しいIT業界で状況は同じです。早期離職対策を行う私たちカイラボのもとにも、IT業界からのご相談をいただく機会は多くなっています。採用も難しいIT業界において、せっかく採用して育てた社員が早期離職してしまうのは企業にとっての痛手も非常に大きくなってしまいます。
そこで今回は、IT業界の早期離職の現状、理由、対策についてお伝えします。
本記事の要約
「IT業界は早期離職率や人材の流動性が高いのは仕方ない」
「エンジニアは売り手市場だから入って3年で離職されても当然だ」
私たちのもとに寄せられる相談や、IT企業のお客さまに対してのコンサルティング、研修などを通じて、このようななかば諦めに近い声を人事担当者の方からよく聞きます。 しかし、実際IT業界の早期離職率に関しては他業種に比べて高くないことをご存知でしょうか?
上記の図は厚生労働省が発表している産業別の早期離職率です。IT業界にあたる「情報通信業」は他の業種と比べると突出して高くはないことがわかります。3年以内の離職率は全体平均31.8%がですので、全体の平均と比べてみても「情報通信業」の28.0%という数字はそれほど高くはありません
また、3年以内の離職率が高い他の業種についてみてみると
1位 宿泊・飲食サービス業(49.7%)
2位 教育・学習支援業(46.2%)
3位 生活関連業(45.0%)
となっており、早期離職率が高い業種になると半分近くが3年以内で離職してしまうわけです。これらの業種に比べるとIT業界はそこまで早期離職率が高いわけではありません。とはいえ、採用コストも育成コストも高いIT業界では早期離職者が数名でるだけでコスト的な痛手は大きいことも事実でしょう。
これら早期離職への対策をとるには、辞める理由を知ることが大切です。
IT業界の話に入る前に、業種を問わず企業の早期離職率が上がってしまう3大要因について共有します。
私たちのこれまでの早期離職対策をおこなってきた経験から、企業の早期離職率が上がってしまう要因として以下の3つが挙げられます。
たとえば「存在承認の低さ」がきっかけとなった早期離職について具体例をあげてみます。
カイラボの発行している『早期離職白書 2016』のインタビューの中に
・残業が多すぎて体調を崩しがちになった
・フォローやサポートが少ない
といったことがきっかけとなり、IT業界を早期離職をした方がいました。
「存在承認の低い状態」とは、この方のように職場環境に対して安心感を感じられなかったり、心身への強い不安を感じていることを言います。
このような状態が続くことで、離職のきっかけとなっていることを普段のインタビューから感じてます。
では、具体的にIT業界の早期離職の理由について解説していきます。
IT業界で早期離職をする人に多いのが
・憧れる先輩がいなかった
・自分の成長が感じられない
といった「成長予感」の低さがきっかけになっている例が多いことが『早期離職白書』の調査からはわかっています。
成長予感とは簡単に言うと「未来の自分がどこまで成長できるかの期待」です。
つまり、「この会社にいて、将来的にどんな自分になれるのか?」というような期待感です。変化の激しいIT業界においては、自分の技術力を高めていけるかどうかを会社に求めている傾向が高く、そういう人たちにとっては、
・思っていたような成長スピードじゃない
・先輩が思ったほど優秀じゃない
と思った時に、5年後の将来を見据えて、早期に離職しています。
こうしたことを踏まえると、IT業界での早期離職率を下げるための対策として
「魅力的な先輩社員の育成」や「ロールモデルになる上司を身近に置くこと」などが挙げられます。もし、今の先輩社員たちの魅力がどうしてもないのであれば、中途採用で「魅力的な先輩社員を採用し、社員の成長予感を高める」という対策も必要かもしれません。
早期離職への対策というと新入社員に対してどのようにアプローチしていくか、という「新卒採用」や「新人育成」の改善を考える方が多いです。しかし、新入社員が成長予感を求めていることを考えると、後輩が憧れをいだくような先輩社員を育成または採用することに力をいれてみることをおすすめします。