「早期離職」「定着支援」などのキーワードで検索すると、地方自治体や民間団体などが「早期離職を防止するためのイベントを開催」などのニュースが見つかります。この1、2年でこういったイベントの数は増えている気がします。
では、そもそも早期離職は防止すべきことなのでしょうか。

早期離職を防止しようという流れの一方で「嫌だと思ったらどんどん辞めればいい」「雇用の流動化を進めるべきだ」という意見の方もいます。起業家や外資系コンサルティング会社出身で書籍を出している方などにこういった主張が多い傾向を感じます。

私も「早期離職白書」なんてものを発行していますので「早期離職なんて問題じゃない!」と言われることはけっこう頻繁にあります。
起業したばかりの5年前は「離職の防止なんてどうでもいいから、うちの会社のダメな社員をどうやれば辞めさせられるのか教えてくれ。」と言われることも珍しくありませんでした。

さて、冒頭のそもそも早期離職は防止すべきことなのか?という話に戻ります。
私は今の日本の早期離職の状態であれば、早期離職は防止した方がいいと考えています。早期離職はうつ病や過労死などの問題とも密接に関係しているからです。

早期離職白書2013の中では早期離職者の方々にインタビュ-とアンケートを実施し、前職への満足度を回答してもらいました。前職に満足をしていた辞めた方を「ポジティブ離職」、不満足で辞めた方を「ネガティブ離職」と呼んでいます。
私のアンケートではネガティブ離職が7割、ポジティブ離職が2割、どちらでもないが1割という結果でした。さらに、ネガティブ離職の人のうちの約3割がうつ病などになっていたのです。

日本人のうつ病の有病率は5%程度といわれています。一方で、早期離職者の場合は約20%であり、ネガティブ離職に限定すれば約30%にもなります。

早期離職を「会社を3年以内に辞めていいのかどうか」というポイントだけに絞れば、こたえは「人によって違うし、こたえなんてわからない」が私の結論です。ただ、実際には早期離職が起きる背景には労働環境や人間関係の悪化によるうつ病や過労死などの問題があります。だから私は早期離職は防止すべきだと考えています。

将来的には、ネガティブ離職がゼロになれば、早期離職率が3割だろうが5割だろうが、どちらでも良いと思います。そのための第一歩として、今は早期離職の防止の取組みは必要です。

一つ気になるのは、早期離職防止のイベントの主催者や登壇者の方々が「なぜ、早期離職を防止すべきなのか」についてしっかり語れるのかについてです。なんとなく問題だと思うという程度で語っている人が多いのも事実です。そんな状態でイベントをやっていては、きっと早期離職の防止はなかなか進まないのだと思います。