早期離職に関してのセミナーや管理職研修のご依頼をいただいた際には、可能な限りグループでのワークを取り入れるようにしています。早期離職者数百名へのインタビューから実例をもとに「どうすれば早期離職を食い止められたか」「いきなり『辞めます』と言われる前に予兆を感じることはできなかったか」などについて考えてもらうのです。

 

ちなみに、参加者の属性(業種、職種、年齢、性別など)に関わらず、最も多く出てくる対策は「とりあえず飲みに連れていく」。不思議なことに、それほど飲み会の文化がない(と、人事からは聞いている)組織でも同じ傾向があります。


飲みに連れていくのは、効果が見込める方法の一つです。ただし、万能ではありません。そもそもお酒が飲めない、嫌いという人もいますし、上司の側が酔っ払ってしまい、結局は上司からの「人生の訓示」を2時間聞かされて終わりになってしまうケースもあり得ます。さらに「飲み会も仕事のうちだから」ということで、消極的な理由でお酒の席に参加はするけど積極的に自分のことは話さないという人もいます。

 

大切なことは「なぜ、飲み会に連れていくのが効果的だと考えたのか」ということです。
過去に同じ方法で別の部下といい関係が築けたとしても、相手が変われば効果的な方法は変わって当然です。相手が変わっても過去の成功体験を追い続けているだけでうまくいくはずがありません。

 

人間ですからどうしても相性というものは避けられません。仕事では必ずしも相性がいいから同じ部署になっていると限らず、会社側の都合で相性が悪くても一緒に仕事をするケースもあるでしょう。徐々にお互いの距離を近づけていくのはもちろん大切ですが、それでも相性が良くない場合には、第三者に緩衝材の役割をしてもらうのも手段です。これは、部下の本音を聞き出すときにも有効です。上司自らが「本音を聞かせろ」と言っても、そう簡単に本音を話してくれるものではありません。そこで、本音を聞き出したい社員と年齢が近かったり、趣味が同じだったりと相性の良さそうな人経由で情報を聞いてもらうのです。

 

飲み会のセッティングや、面談の場のセッティングなども2人ではなく3人で設定する方法もアリです。
「本音を引き出す」というと、どうしても1対1でなければならないと考えがちですが、そんなことはありません。身近な誰かが一緒だから緊張が解かれるということも十分にあり得るのです。


創業者やオーナー経営者など、自らの力で会社を築き上げてきた程、すべての情報を自分の手元に置きたがります。

そのため、1対1で「本音を聞かせてくれ」という場面を多く設けているケースもありますが、そういった経営者の方々から多く聞かれるのが「本音を話してくれない」「『辞めたい』という相談ではなくて『辞めます』という報告がいきなり来る」という相談を受けます。

 

本音を引き出すことが目的であれば、一人で解決しようとするのではなく、周囲を巻き込んでみる方法もアリなはずです。

「一人で解決しようとしない」ことは大切だとわかりながらも意外と実践できないので、周囲を使うことを今までより少しだけ意識してみると、今まで見えていなかったものがみえてくるかもしれません。