この記事では早期離職の実態についてお伝えします。
大企業に就職しても3年で3割が辞めるって本当?
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本記事の要約
カイラボでは早期退職の問題と対策に10年近く携わっていますが、離職率を語る際「3年3割」という言葉を聞いた事がある人は多いのではないでしょうか。
しかし「企業規模」で見た時、また違った結果が見えてきます。
この記事では最新の離職率データの解説と、実際の退職者や人事担当者の声も合わせてご紹介しています。
こちらの記事はYouTubeにて動画解説もしております。ぜひ参考にしてみてください。
大卒新入社員の3年以内離職率
まず、大卒新入社員の3年以内離職率を見ていきましょう。
厚生労働省が発表した2021年秋のデータが以下の通りです。
- 全体平均:31.2%
- 1000人以上の事業所:24.7%
確かに全体平均は31.2%と3割を超えていますので「3年3割」になります。
しかし1000人以上の事業所、いわゆる「大企業」では3割を下回る24.7%と、全体平均を約7%ほど下回っているため「3年3割」には当てはりません。
「大企業に就職しても3年3割です」と言う方もいますが、それは残念ながら間違った情報。
実際2021年のデータに限らず、例年大企業の離職率は20%~25%で全体平均を下回っているため、大企業の方が離職率が低い傾向にあるのは事実なのです。
大企業と中小企業の離職率は縮小傾向
先ほど“大企業の方が離職率が低い傾向”とお伝えしました。
一方で、このようなデータもあります。
グラフは3年以内の離職率を表したものです。
まず、ここで分かることは、100~499人の事業所に比べて1000人以上の事業所のグラフの方が下にあるということです。
つまり、常に“大企業は辞めにくい傾向にある”ということ。
ただし、注目をしていただきたい部分は他にもあります。
1000人以上の事業所のグラフは2009年を底として、右肩上がりになっていますが、それに比べて全体平均のグラフは横ばいです。
そのため、“大企業は辞めにくい傾向にある”というのは事実ですが、近年その差は少しずつ縮まってきていることも、このグラフからは読み取れます。
今後、グラフの位置が“同じになるのか”もしくは“逆転するのか”は分かりませんが、この差が縮まってきているという事実が分かるとても重要なデータです。
大企業を3年以内で辞めた人の声
ここで、カイラボが実際にインタビューをした“大企業を3年以内で退職した人たちの声”を一部ご紹介します。
30歳くらいの先輩を見た時に、心の底からこういう人になりたいと思える人がいなかった。
IT企業 ビジネス職
この方は、憧れる先輩が居なかった例です。
この会社が用意しているキャリアステップでは、自分の考える成長スピードには足りないと思った。
通信系企業 営業
この会社はキャリアステップについても面白い取り組みをしていて、若手の抜擢も積極的に行っている某有名企業でした。
しかし「自分が希望する成長スピード」として考えた時に物足りなさを感じたようです。
優秀な先輩社員から辞めていた。自分も早めに転職しないとヤバいと思った。
メーカー 総合職
優秀な人から辞めていく環境に危機感を覚えた例です。
周りの社員の意識の低さを見て、このままこの会社にいたら自分もダメになってしまうと思った。
金融機関 総合職
金融機関に就職できたことがゴールとなってしまい、就職したはいいけど“自分が何をしたくて、何をすべきか”が分からず、「この会社に入ったから安泰だよね!」という志の低い環境に耐えきれなくなった例です。
以上になりますが、今回紹介した声はほんの一部です。
もちろん、離職理由は人それぞれ。全員に当てはまる訳ではありません。
ただ、こういった声もあるということで参考にしていただければと思います。
大手企業 人事担当者が語る現状
会社を去る人たちにも様々な理由がありましたが、一方会社の人事担当者はどのように思っているのでしょうか。
カイラボでは就職人気ランキングTOP10常連の、とある“超有名大企業”の人事担当者の方とお話をする機会がありました。
そこで語られた大手企業の現状は以下の通りです。
- 新卒の離職率はそれほど変わってない
- 変わったのは辞める人の属性
- 優秀な人が辞めるようになってきた
ここ最近の3年以内の離職率は若干の上下はあるものの、それほど変化してないないそう。
しかし、辞める人の属性には変化があったようです。
その昔、辞める人といえば“成果が出せなかった”“会社に馴染めなかったり”と、本人が「もう無理です」と言ってやめていき、大手から2番目、3番目の会社へ転職するといった傾向にあったそうです。
しかし現在は入社時から優秀な人材として育て、実際に成果も出していた社員が辞めていき、スタートアップやメガベンチャーなどに転職する傾向が多いそうです。
この現在の“優秀な人材が辞める”傾向について、会社としても危機感を持っているとのこと。
全ての会社に当てはまる訳ではありませんが、就職人気ランキングTOP10常連の人気企業ですら、このような実態があるということを事実として知っておく必要があります。
まとめ
今回は、大手企業の3年以内の離職率について解説しました。
大企業と中小企業の離職率の差が徐々に縮まって来ていることも重要ですが、その中身である「どういう人が」「どういう理由で」「どこに転職したのか」など、離職率といった数字だけではなく“辞めていく人の質”についても考えてみると良いかもしれません。
「この会社に入ってよかった」「この会社でやりがいを持って働いてます」と皆さんが思える、思ってもらえる状態になることがベストです。
ぜひ動画も含めてご覧いただき、参考になれば幸いです。