私の会社も会員になっているとある会の会報誌にも新卒採用に関する話題が2つ掲載されていました。
毎月発行の会報誌で、紙面も限られている中で同じ月に2つも採用に関する話を掲載するということは、それだけ注目度の高いトピックということなのでしょう。
この2つの話は寄稿者がまったく別の立場ということもあって、内容も異なっていました。
大学教授が書いた方の内容は、
「中小企業は大企業に行けなかった人材のおこぼれをもらうという時代は終わった。中小企業だからこその魅力を発信して優秀な人材を確保すべきだ」というもの。
もう一つは大手人材系企業出身で現在はコンサルタントとして活動中の方が書いた内容で、
「これまでの採用方法が正しかったのか間違っていたのかの振り返りから始めましょう。」というもので、前おきとして「学生は大企業に応募した後に中小企業に目を向け始める」と述べていました。
中小企業ならではの価値を発揮しましょうという話はわかります。
ただ、中小企業が採用において大企業と真っ向から勝負する必要があるかというと、ないと思っています。それに現実的には急成長中のベンチャー企業を除けば、大企業の内定を蹴って中小企業に入社する確率は極めて低いと思われます。
給与でも業務内容でも福利厚生でも、全体の傾向としてみれば中小企業よりも大企業の方が成長できる環境が整っているのも残念ながら事実です。
「大企業に入っても3年以内に3割辞めてしまう現在では、大企業に行くのはムダ」という人もいますが、大企業の3年以内離職率は3割もありません。2割程度です。一方で中小企業の3年以内離職は約4割で、これらを平均すると全体で3割という数字になっています。
やっぱり大企業の方が人は辞めにくい傾向にあるのです。
中小企業が大企業に正面切って人材獲得競争をしても勝てないのであれば、大企業は採用しないけど、少し運用を工夫すれば十分に活躍できる人材を狙いにいった方が効率的ではないでしょうか。
最近注目を集めている働きかたであれば、時短勤務や勤務日数を限定した働き方、障害者の雇用なども含みます。
健常者の大卒であっても、人とのコミュニケーションは苦手だけど単純作業は得意とか、計算は苦手だけどお酒にはめっぽう強いとか、仕事の特性上求める資質を満たしていれば他の部分は気にしないという方法もあるはずです。
中小企業の魅力を発信して大企業ではなく中小企業に人材を集めようとするのは、甲子園優勝のエースピッチャーをプロではなくて独立リーグで採ろうといっていようなもので無謀でしかありません。
むしろ、実力的にはプロでは難しいけど、磨けば光る原石を見つけて育て上げるという能力に長けた組織が、これからは生き残る気がしてなりません。