中小企業白書2015年度版のなかに「人材定着に関して有効と認識ている取組み」という項目があり、なかなか面白かったので紹介します。

 

前提として、中小企業は人材不足であり、社員の離職率も大企業と比べて高い傾向にあります。
そのため人材定着のために様々な施策が必要と考えられるため、中小企業白書の中でこのような調査が掲載されたのだと思います。

 

具体的な施策としては、
 -賃金の向上(基本給・ボーナス)
 -興味にあった仕事・責任のある仕事の割当
 -子育て支援
 -社外との人材交流

など、19項目が挙げられています。

 

それぞれの項目について「有効である」「どちらとも言えない」「有効でない」と3つの選択肢から回答する形式の調査です。
「有効である」の回答が最も多かったのが「賃金の向上」です。まぁ、これはなんとなくわかります。給料が上がるというのが一番わかりやすいですからね。
ただ、「賃金の向上」についても「どちらとも言えない」の回答も34.1%であり、懐疑的な見方をする人も少なくありません。それでも「有効でない」は2.1%ですから、98%の企業では賃金向上はやってみる価値はあると思っているようです。

 

一方で「有効でない」と回答した率が圧倒的に高かったのが「在宅勤務・テレワークの導入」です。30.4%が「有効でない」と回答しており、「有効である」と回答した28.4%を上回っています。
19項目ある中で、「有効でない」が「有効である」を上回ったのはこれだけです。他の項目では「住宅補助」や「サークル活動・社員旅行」が7%台になっている程度ですから「在宅勤務・テレワークの導入」は「有効でない」が10%を超えている唯一の項目でもあります。

 

この調査はあくまで意識調査であるため、実際に有効であったかどうかはわかりません。ただ、現状として在宅勤務には否定的な企業が多いのは事実のようです。
そういえばチーム・ラボの猪子寿之氏も「うちは在宅ワークは禁止」と言っていましたね。もっとも猪子氏の場合は「クリエイティブな仕事でテレワークはない。分業ができる仕事ならアリ」ということで、完全に否定しているわけではなさそうでしたが。

 

個人的には中小企業が在宅勤務を進めるのはハードルが高いと思っています。不可能ではないと思いますが、取り組みやすさと定着率向上への効果を考えると優先順位は低い気がしてしまいます。理由は簡単で、中小企業の場合、業務をしっかりと切り分けられないことが多いからです。一人であれもこれもやらないといけないという状態になると、ちょっと隣の人に話しかけて相談するとか、仕事を頼むとかできないと何かと面倒です。

とはいえ働く人の側の在宅勤務やテレワークの需要は今後高まる可能性が高いでしょうから、10年後には在宅でもテレワークでもないまったく新しい働き方が生まれているかもしれません。