「早期離職を減らすにはどうしたらいいですか?」というストレートな質問をされることがあるのですが、私は「特効薬はありません」とお答えしています。
企業によって状況が違うからです。
「これさえやれば完璧です」という特効薬はないものの、一方でこれをやるとダメだなと思うことはあります。その一つがタイトルにも書いた「若手社員の意見を聞きすぎる」ことです。
「意見を聞く」のがダメなのではなく、「聞きすぎる」のがよくないのです。
ビジネス書などで「答えは現場にしかない」というような言葉を見かけることがあります。現場を良くしていくためには現場の声に傾け、現場から情報を吸い上げる必要があるということです。この考えは私も賛成ですが、この言葉をとらえ違えて「現場にある情報を正しい」「現場の言うとおりにすれば改善される」と考えてしまう人がいるから大変です。
現場の情報に耳を傾けるのは重要ですが、一から十まですべての意見を聞くわけにはいきません。当然人によって意見が対立することもあるでしょうし、制約条件もあるでしょう。
だから、できないものはできない、やらないものはやらないとはっきり決めるべきです。
中途半端に「みんなの意見を聞きます」と言ってみたものの、意見の調整がうまくいかず、社員側には自分の意見を100%反映してくれなかったという不満が残り、調整した人事や役員には疲れとストレスだけが溜まっていくという例も実際に企業では起きています。
現場の情報は重要ですが、あくまで情報であって「解決すべき課題」であるとは限りません。
情報は当然取捨選択が必要です。
だから、現場から意見を聞く場合にも「会社をより良くするために多くの情報を集めている」と伝えるべきですが、「みんなの意見を反映する」という内容は安易に口にすべてきではありません。
若手社員の意見を聞き入れたものの、一部の声の大きい若手社員の意見に偏ってしまい、他の社員が興ざめして離職率が上がったという話も聞いたことがありますし、全員の意見の妥協点に落ち着かせた結果、誰も得をしない中途半端な状態になってしまい「大きな不満はないけど、楽しくないし働き続けたいとは思えない」と言われてしまった会社の例もあります。
若手社員を含めた現場の声を聞くのは重要ですが、そこで得た情報をどう扱うかはトップの決断にかかっているのです。