インターネット上で少し検索すれば、離職に関する調査データは数多く出てきます。就転職のナビサイトが大規模に実施しているものであれば、数万人規模の調査も珍しくありません。離職理由についても詳細な調査がなされています。
ただ、こういったインターネット上の調査での「離職理由」を見るときは少し注意が必要です。
離職理由のアンケート調査では見えにくい、本当の辞めた理由
離職理由に関するアンケート調査のほとんどが、選択肢から離職理由にあてはまるものを複数(場合によっては3つまでなど上限を決めて)選択する形式です。このアンケート調査は良い面もありますが、「辞めようと思ったきっかけ」から「辞めると決断した決め手」までの間に感じた会社への不満がすべて含まれてしまうというデメリットもあります。
一般的な離職と、私が専門としている早期離職(新卒入社後3年以内の離職)では多少の違いはあるかもしれませんが、私がこれまで数百人の早期離職者へインタビュー調査をして感じたことがあります。 「辞めようと思ったきっかけ」と「辞めると決断した決め手」は違うケースがほとんどなのです。
また、人によってはきっかけから決め手までが1年以上と長期間にわたる方も少なくありません。1年間も辞めようかどうしようか悩んでいれば、その間に不満に思わない項目の方が少ないかもしれません。
インターネット上の調査の場合、きっかけと決め手は区別されませんし、回答する本人もうまく整理できていないことが多いです。特に転職活動をしている場合は、転職の面接対策で離職理由をキレイにしているため、いつのまにか本人の中で嘘が本当になってしまっていることさえあります。
そのため、インターネット上の調査における「離職理由」は、「きっかけ」から「決め手」の間で一番印象に残っている会社への不満が回答されている可能性が高いと私は考えます。
一度嫌いになった会社は嫌なところばかりが目に付いてしまう
これは、恋人同士が付き合ってから分かれるまでのプロセスと似ています。最初は好きだったのに、何かのきっかけで「ちょっとこの人とは無理かも」と思い始めます。
そうなると、今までは気になっていなかった点まで気になり始めてしまうことはありませんか?例えば、しゃべり方、笑い方、友人への態度、デート先の選定、収入、プレゼントなどなど。
そして「もう無理!わかれる!」と決断する瞬間がやってくるわけですが、
決断する決め手は必ずしも「この人とは無理かも」と思い始めるきっかけとは同じではないと思います。
さらに別れたあと、友人に「何が嫌だったの?」と聞かれ、すぐにこたえるのはきっかけでしょうか、決め手でしょうか。きっかけでも決め手でもないけど、日常的に頻繁に起こっていたできごとや、直近で気になったことをこたえることもあるのではないでしょうか。
早期離職も構造は同じです。
「きっかけ」と「決め手」以外のことも改善の余地はありますが、最優先で改善すべきは「きっかけ」や「決め手」になったことです。それ以外の不満要素は「きっかけ」さえなければ気にならなかったことかもしれいのです。
効果的・効率的に早期離職対策をするのであれば、まずは離職理由の「きっかけ」と「決め手」に絞って調べてみることをおすすめします。
(2017年10月11日 メールマガジンより)
この記事はカイラボのメールマガジンで記載している代表の井上のコラムから転載(一部追加・修正あり)した内容です。カイラボのメールマガジンの登録はこちらから