企業が新入社員に求める要件の水準が高すぎることを「神スペック」といって揶揄されていますが、実は新入社員を含む若手社員が上司や先輩に求めているものも同じように「神スペック」なのではないでしょうか。
私が早期離職者100人に行ったインタビューでは、退職を考えるようなきっかけとして「上司との関係」を挙げる方は非常に多かったです。
また、これは私自身も経験があるのですが、一度会社や上司に対して不信感を抱き始めると、今までは気になっていなかったようなことに対しても「この会社はおかしい」とか「あの上司は人間としてダメな人だ」などと感じるようになってしまいます。仲の良かった友人や恋人が、ふとしたきっかけで「顔も見るのも嫌」となってしまうのと同じようなものでしょう。
さらに厄介なことに、上司や先輩からどんな風に接して欲しいかというのは、人によって大きく異なります。
懇切丁寧に教えてあげれば「信頼されていないと感じた」という人もいるし、育成のために敢えて若手に仕事を任せてみれば「無茶ぶりだ」「放任だ」と言われることもあります。そして、多くの会社では上司は部下を選べません。経営者や部長クラスになればある程度選べるというケースもあるとは思いますが、実質的な教育担当者に選ぶ権利はないでしょう。
結果的にどんな若手がきても、若手に合わせて「適度に」「臨機応変に」対応しながら育てることが要求されます。
加えて、あるべき上司や先輩の姿という価値観についても、以前に比べて多様化してきていると感じます。
(価値観の多様化の根拠はセミナーなどでは必ず話すのですが、長くなる&文章だけでは難しいので割愛します。)
口で言うのは簡単ですが、実務を抱えながら部下や後輩にも相手に合わせて対応するというのは簡単なことではありません。さらに、今年の部下や後輩とはうまくいっていても、来年入ってくる新人と同じように接することができるかと言えばそうとは限りません。
やっぱり、上司や先輩にも神スペックが求められている気がするのです。
新入社員に求めている内容が高水準過ぎることを反省することも重要ですが、同じように上司や先輩、育成担当者の方々もかなり高い水準のスキルが求められていることは、会社も若手社員も管理職や育成担当者本人も理解しておくと、お互いの心理的・物理的負担は減ると思います。