最近、人事領域で注目されているキーワードが従業員体験(EX)です。
この記事では、従業員体験の意味や取り入れるメリットについて解説します。
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最近、人事領域で注目されているキーワードが従業員体験(EX)です。
この記事では、従業員体験の意味や取り入れるメリットについて解説します。
本記事の要約
従業員体験を表す「EX」とは、Employee Experience の略です。
EXは、従業員が入社して日々業務する中でどんな体験(経験)を通じて何を感じるのか、またはその体験によってどのような心理変化があるのかについて考えるための概念を指します。
ここでいう体験には、普段の業務や人事制度、上司からの評価などが含まれます。人事領域において、EXは最近とても注目を集めている用語なのです。
(この記事の内容はこちらの動画でも解説しています。)
EXと似ている言葉に、CXとUXがあります。これらに含まれるXはEXの場合と同じく経験(= Exprience)の略であり、それぞれの意味は次のようになります。
どちらも、マーケティングや商品開発などの分野でよく使われる言葉です。
CXとUXに比べ、EXの知名度はやや下回る印象です。
EXはマーケティングではなく、いわゆる社内の環境改善を考える時に使われる言葉なのです。
EXに影響を与える要素には、例えば次のようなものがあります。
など、この他にも様々なものがEXに影響を与えます。
例えば、社内の人間関係を例として考えてみましょう。
人間関係を変えていこうとすると、従業員の部署や座席の配置の変更を考えることになります。
これらの変化によって、従業員の心理がどのように変わるのか、業務に対してどのような影響が出ているのかを考察するのがEXです。
福利厚生や研修制度などにおいても同様です。
新しい制度を導入した時、それが従業員の考えや心理、仕事や成果に対してどのように反映するのか考えていくのがEXの概念になります。
ただし、人間関係や評価制度などといった一点ずつで考えるというよりは、入社してから退社するまでにおける一連の体験の中での心理の流れをみていくのがEXの特徴です。
このように一連の流れの中でマーケティングや商品開発をとらえるというのは、CXやUXでも同様です。
では、EXを考えることのメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
まずメリットの一つに、人事施策が社員にどう影響するのかをイメージしやすいというものがあります。
新しい人事施策を導入する時、起こりうる場面や結果など、当然様々なことを考えてから実行するでしょう。
その時に、改めてEXという視点から考えていきます。
EXは一連の流れになっているので、単純に一つの施策の結果だけではなく他の施策との連動を考えることになります。
例えば3年目の従業員に研修を行う場合、1年目、2年目の流れからその研修がどう影響していくのか、あるいは4年目、5年目になってからどのような影響を与えるのかなどを一連の流れとして考えることができるのです。
さらにEXという共通言語をもって、施策を考える観点が統一化できるというメリットもあります。
つまり、大きなメリットとしては良かれと思って導入した施策が逆効果という事態を事前に防げる可能性が高まるということがあります。
さらに、メリットを具体的に考えてみましょう。
例えば、社内のコミュニケーション不足解消のために、研修を計画している場合。
このような研修を行う背景には、さまざまな状況が考えられます。
コロナ禍によって以前よりコミュニケーションをとる場が減っているため、コニュニケーションの場と研修という形で設定するというケース。
あるいは、管理職がリモートによるコミュニケーションに慣れていないので、リモートでのコミュニケーションの仕方を研修するなどといった様々な理由があるでしょう。
こういったコミュニケーション研修も、EXという視点を入れると次のように考えることができます。
体験にはその場、その瞬間があるので、どのような場面でコミュニケーション不足を感じる体験をしているのかということです。
それが報告や相談をする場なのか、もしくは部門が営業と管理だと捉え方が違うなどというように、具体的な場面を想定しながら話すことができます。
そうすると、抽象的な総論としてコミュニケーションが不足しているという以上の事が考えられます。
例えば、すぐ相談したいのにできないということがコミュニケーション不足を引き起こしているのであれば、それは本当に研修で改善できるのかを検討し直す必要があります。
こういった場合では、たとえ研修をしたとしても、すぐその場で聞くことができるようにはならないでしょう。
すぐその場で質問できるようになるにはどうすればいいのか、もしくはすぐ隣の人に聞くような感覚と同じような状態を、仮にリモートワークであってもできる状態にするにはどんな方法があるのかを考えなければなりません。
具体的な場面やどういう状況で、どんな悩みなのかということが問題の起点になっているのが、このEXの大きな特徴です。
最近EXやCX、UXといった横文字の用語が多く、よくわからないという人もいるでしょう。
このEXという視点は、本当に必要なのでしょうか。
それ自体は、「社員の目線に立とう」「当事者意識を持とう」という既存の考え方と同じです。
そこにEXという名前がついて、一応概念として提供されているというだけで、特別に新しい考え方ではないのです。
しかし、社員一人ひとりの視点に立つ考えを浸透させるための共通用語として、「EX」を使うことは有効です。
大切なのは、人事施策ありきではなくてEXありきで人事施策や福利厚生制度、研修制度を考えていくことです。
打ち合わせや会議で人事施策の導入を進めていく中、これをもう一度改めてEXという観点で考えて、本当に有効なのかを立ち返って考えることができます。
これは、改めて社員一人ひとりの目線に立って考えましょうということと、やっていることは同じです。
ただ、その時にEXという言葉と概念があると、みんなが共通理解できているため同じ方向を向きやすくなるでしょう。そのために、こういった言葉を使うのは効果があります。
「社員の目線に立つ」ということは、わかりにくく難しいことです。しかしEXの視点から捉えると、どういう瞬間のどういう体験場面なのかをさらに踏み込んで考えることができます。
逆にいうと、そこまで活用できなければEXではないともいえます。
例えば人事の施策を考える会議の場でも、全員が同じ粒度で考えることができるというのがEXを活用するメリットになるでしょう。
EXと似た概念には、CX(顧客体験)やUX(利用者体験)があります。
どの概念も、当事者の経験・体験という視点を重視しています。
EXに影響を与える要素は多岐にわたっており、ある意味では業務上のすべてともいえるでしょう。例えば、オフィスの立地やオフィス内での座席位置などもEXに影響します。
EXが大事というよりも、従業員の視点から施策をとらえることが重要です。
このEXという概念があれば、施策を考えるときに便利になります。
この記事が、EXを活用してどのように人事施策を立てていけばいいかの参考になれば幸いです。