人手不足が深刻化する中、経営者の方や人事の方々から人材定着に関する様々な悩みをお聞きします。
「まともな人から辞めていってしまうんですよ…」
「将来を期待してた人から辞めていって困っている」 などなど
なぜ、「まともな人」から辞めていくのでしょうか?
今回は、企業の分類をしながら、「まともな人から辞めていく」企業のタイプ別傾向と対策を考えていきたいと思います。
本記事の執筆者
人手不足が深刻化する中、経営者の方や人事の方々から人材定着に関する様々な悩みをお聞きします。
「まともな人から辞めていってしまうんですよ…」
「将来を期待してた人から辞めていって困っている」 などなど
なぜ、「まともな人」から辞めていくのでしょうか?
今回は、企業の分類をしながら、「まともな人から辞めていく」企業のタイプ別傾向と対策を考えていきたいと思います。
本記事の要約
私たちカイラボでは、企業の分類をするときに「ハーズバーグの二要因理論」をベースにして分類しています。
二要因理論とは、アメリカの学者・フレデリック・ハーズバーグが提唱した仕事の満足と不満足に関する理論で、職場の満足感を生む要因と不満足を生む要因はそれぞれ違うものであるとしているのが大きな特徴です。
たとえば、「給料」を例に考えてみましょう。
給料が低すぎると感じる場合には、会社への不満は募ります。一方、給料が上がれば上がるほど仕事への満足度が高まるでしょうか?ハーズバーグは給料は不満に思わないレベルまで上がれば、それ以上は満足度には寄与しないと考えています。
少し極端に言ってしまえば、年収300万円の人が持つ給料への不満は年収1000万円になれば解消されるけど、年収1000万円の人が年収2000万円になっても会社への満足度は高まらないということです。
こうした不満足を生む要因を、二要因理論では「衛生要因」といい、給与の他には「福利厚生、職場環境」などが該当します。「衛生要因」は満たされなれば仕事への不満に繋がりますが、ある程度満たされれば、それ以上はどれだけ充実しても満足度が上がらないのが特徴です。
一方、満足を生む要因としては「仕事のやりがい、達成感」などが挙げられます。
たとえば、仕事のやりがいが不足していても、その分だけ不満足になるわけではありません。逆に、やりがい・達成感は大きければ大きいほど、仕事への満足感は高まっていきます。
こうした満足を生む要因を、ハーズバーグの二要因理論では、「動機付け要因」といいます。「動機付け要因」は、大きければ大きいほど満足感は高まりますが、少なくなるにつれ不満足にはならないのが特徴です。
私たちが早期離職のコンサルティングをさせていただく際、クライアント企業には「動機づけ要因(=満足の要因)」と「衛生要因(=不満足の要因)」をそれぞれセルフチェックをしていただき、スコアを出していただきます。
そのスコアを元に縦軸を満足の要因、横軸にを不満足の要因としてグラフに置き換えてビジュアル化して、自社の状況が以下の4つの象限のうちどこに入るのかをチェックしていただいています。
各象限についてご紹介していきます。
動機づけ要因も衛生要因も低いのがブラック企業です。よくニュースになることも多いのでご存知かと思いますが、給料も低ければ職場環境も劣悪、仕事への不満が高く、満足度も低い企業です。
企業としてはいち早くこの段階は脱出しなければいけませんし、働いている個人はこの会社の環境を変えるか、辞めるかすることをおすすめします。
動機づけ要因は高いが、衛生要因は低い企業を「やりがい搾取企業」と呼んでいます。たとえば、仕事を通じて大きな達成感を得ることができますが、給料や福利厚生といった面では低い水準にあるような企業です。
営業色の強い会社や、若くして成長できることをうたっている会社の中には、やりがい搾取企業になっているケースもあります。
衛生要因は高いが、動機づけ要因は低い企業のことを、「ぬるま湯企業」と私たちカイラボでは呼んでいます。実は、日本の中堅、中小企業の多くはこのぬる湯企業にあたるのではないかと思っています。具体的には、福利厚生もお給料も一般的な水準よりも高いのですが、やりがいや充実感を得ている人は少ない企業です。
最後に、よく耳にするホワイト企業ですが、私たちカイラボでは、動機づけ要因も衛生要因も高い企業を「ホワイト企業」と定義しています。
注意すべきは、ある人にとってのホワイト企業は別の人にとってはホワイト企業ではないかもしれないことです。社外からみればホワイト企業には見えない会社でも、社員にとってはホワイト企業と感じているケースもあるのです。
早期離職の対策を考える際には、以上の4分類の中で自分の会社がどこに位置づけられるのかを整理してみることが大切です。
ハーズバーグの二要因理論をつかった考え方は『早期離職白書2019』の中でもご紹介しています。
さきほどの4つの企業タイプ分類別に傾向があります。ブラック企業は論外として、ここでは「やりがい搾取企業」と「ぬるま湯企業」の傾向について解説します。
やりがい搾取企業でまともな人が辞めていくケースとしては「やりがいはあるが、給与水準に将来の不安を感じる」「やりがい搾取されていることに気づく」ということが多くなっています。
一方、ぬるま湯企業の傾向としては「大きな不満はないが、今の会社では自分の能力やスキルが上がらない」「この会社に居続けてしまうと、自分の将来の市場価値に不安を感じる」という理由で離職をする方が、これまで私たちがインタビューした中では多くなっています。
どちらのタイプも「将来を見越して辞める」点では同じですが、それぞれ動機が異なります。企業として早期離職対策を考える際には、自社の状況がやりがい搾取企業とぬるま湯企業のどちらの傾向が強いのかを分析してみることが大切です。
将来を見越して辞める場合と似たケースとして「成長予感の不足」があります。成長予感不足については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まともな人が辞めないための対策事例として、あるIT企業の事例を紹介します。
その会社では、転職エージェントを活用しながら社員の市場価値を測り、それを元に給与を算出するという取り組みを導入しました。
仕組みとしては、以下のような内容です。
・年に一度、社員はキャリアシートを更新
・会社側で複数の転職エージェントにキャリアシートを提出
・転職した際に、同業界・同職種でもらえる給与の見積もりをエージェントに出してもらう
・見積もりを元に、給与を算出する
この仕組みであれば、社員は市場価値をもとに評価されていることになるため、まともな人が辞めにくい状況を作ることができます。
転職エージェントを活用しているため、コストもそれなりにかかっている取り組みですが、社員を大切にしていることが働いている人にも伝わり、それによって定着率が高まる好事例だと思います。
まともな人が辞めないようにするための対策を考える際には、まずは自社の状況がどういう傾向にあるのかを見極めることが大切です。
逆にやってはいけないのは自社の状況について、「辞めていくのは、給料が低いからに違いない!」とか「社内のコミュニケーションが悪いから、辞めていってしまうんだ!」と勝手な思い込みを持ってしまうことです。
人事担当の方の思い込みで離職する原因を推測してしまうと実は間違っているケースも多く、対策も的外れなものになってしまいます。
例えば、人事の方が「給料の低さ」が原因と考えていても、実際に辞めた方の話を聞いてみると「他社に転職した場合に年収が下がってしまうことがわかっていたが、それでも人間関係に耐えられなくて辞めた」という給与以外の理由で辞めているケースもあります。
また、「社内のコミュニケーションの悪さ」という原因でも、普段のコミュニケーションの悪さそのものではなくて「社内のコミュニケーションが悪いことを放置している経営陣の姿勢に嫌気が差した」という理由で退職している方もいました。
辞める理由を一番知っているのは、辞めた社員と辞めたいと思っている社員です。勝手な思い込みではなく、そういう方達からに対してヒアリングなどを行い、自社の状況をきちんと把握していくことが大切です。
私たちカイラボでは、実際に早期離職をした方々へのインタビューを通じてクライアント企業に対し定着率向上の対策など提案させて頂いております。外部の機関などを活用しながら、自社に必要な対策がどういう対策なのかを考えましょう。
そして、重要なところにお金と時間をしっかりと投下し、まともな人が辞めない、そして働きがいのある会社を実現してください。