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離職率の低い企業は何が違う?中小企業の取り組み事例を一挙公開

社員の離職率に関して悩んでいる企業の方も多いと思います。

参考にしようと他社がどのような取り組みをしているかを調べても、「自社は中小企業なのに大企業の事例ばかりが載っている」「給料を上げれば退職を防げる」など、自社に合う事例が見つからず途方に暮れている方もいるのではないでしょうか。

そこで、この記事では中小企業が離職率を下げるためにどのような取り組みをしているかをご紹介します。

事例1:金子製作所 中堅社員への教育

株式会社金子製作所は埼玉県岩槻区にある精密切削加工事業を営む創業60年の企業です。ものづくりへの誇りとこだわりを持ち、欧米などへ部品の供給を行っています。
埼玉県の若手社員の職場定着支援事業を活用して離職率改善に取り組んできました。機械加工という職人的な業界の中で人事制評価制度の運用は悩みの種ですが、同社は「全社員が納得する完璧な人事制度はない」という考えに基づき、常にPDCAを回す仕組みを作っています。

埼玉県が同事業の取り組みの内容をまとめた「若手社員の職場定着支援事業 事例集」より、金子製作所の取組みをご紹介します。

1.離職率に関しての悩みや問題意識

金子製作所の事業は機械任せにはできない高度な加工技術と知恵が必要です。若手社員に技術習得まで長期間かつ計画的な人材育成をして、キャリアを描けるようにすることを重要視しています。

そのために社員定着化の取り組みとして、全社員にアンケートを行って教育制度の改善を図ることにしました。

2.具体的な取り組み内容

金子製作所は若手社員を受け入れる側である中堅社員の教育が大切であると考えました。
中堅社員への教育には外部研修を積極的に活用して、資格等級ごとの「職務遂行能力基準」と「行動基準」の設定を行い、目標を明確にします。
この目標設定は上司と部下が一緒になって行います。そして、半期ごとの振り返りは人事担当者も加えた三者面談を実施して、コミュニケーションの促進します。

3.取り組みにあたって工夫したこと

同社は全社員が納得する完璧な人事制度と教育方針はないという考えを大切にしています。だからこそ、年に1回は全社員にアンケートを実施して、フィードバックをしながら良い制度の構築を目指しています。

4.成果

金子製作所は埼玉県が提唱するウーマノミクスに賛同し、女性が仕事で活躍するための制度も充実させています。社員数が約120人のうち、子育て後に再就職をしている女性を含めた約40人の女性社員が働いています。

事例2:東京オート 社員満足の改善

東京オート株式会社は栃木県小山市にあり、全メーカーの新車・中古車を扱うほか整備、車検、保険などカーライフをサポートしています。
顧客視点で万全な整備体制とアフターサービスを提供して顧客満足度を上げることと併せて、2013年からは社員満足度を改善する独自の人材育成を行い、企業の生産性をアップを目指しています。
東京オートは「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選ばれており、同事業の紹介を行った冊子から東京オートの取り組みをご紹介します。

1.離職率に関しての悩みや問題意識

従業員の離職を防いで業務で能力を発揮できるように様々な施策をすることを「リテンションマネジメント」と言います。
リテンションマネジメントは、単純に労働時間を減らすだけでは実現しません。
東京オートは従業員満足度を高めるために、現場社員が会社の施策に満足して「頑張ろう」と思える必要があると考えていました。

2.具体的な取り組み内容

人を活かす人材制度と従業員の満足度を改善する活動によって、定着率アップを目指しました。
まずは人事評価を定量的に図れる成果だけではなく、期待される行動といった定性的な評価をするなど、職務の活性化につながる評価の仕方を実施しています。

3.取り組みにあたって工夫したこと

東京オートは2013年から毎年、従業員の定着を目的にした意識調査を行ってきています。調査をして終わりではなく、調査結果をきちんと把握して、組織風土の改善活動の仕組化に役立ています。
例えば、どの部下の仕事に対する意識・満足度が下がっているかを上司から現場に共有することにも調査結果を活用しています。

改善活動は主体的に従業員全員が参加することで、働きやすさと働きがいの両方を向上させることを軸にしています。
また、社内コミュニケーションの活性化を進めるには従業員個人で熟考し、現場チームで議論した結果をES委員会や部門会議、経営会議と上層部に上げていく方法を行っています。このように具体的な改善策を実行に移すまでのスケジュールが組まれているおかげで、改善サイクルを回せています。

最初は現場のメンバー同士で会社の問題を解決すべく委員会を作って議論を交わしています。その場には上司を入れずに現場のメンバー同士で改善策を考えさせることで、主体的に改善活動をする流れが生まれるのです。

4.成果

これらの取組みの成果として、社員同士の議論が活発になり上層部に意見を上げやすくなったため風通しの良い組織作りが出来上がっています。他にも就業時間の短縮や女性の活動躍進といった変化が起きて、順調に人材の定着化が図れているといいます。

事例3:アイコクアルファ 夢親制度

愛知県稲沢市にある創業70年のアイコクアルファ株式会社は離職率を減らす課題に取り組み、製造業を中心とした業界新聞大手の「日刊工業新聞」にも取り上げられました。同社は資本金12億円、従業員1056名と中小企業ではありませんが、歴史の古い製造業の事例ということで日刊工業新聞の記事よりご紹介します。

1.離職率に関しての悩みや問題意識

新入社員の離職率低下を問題視しており、現行の育成制度の工夫と改善によって働きやすい環境に整える必要がありました。

2.具体的な取り組み内容

そこで、アイコクアルファは「夢親制度」という先輩社員が新入社員の親代わりになって5年間、仕事からプライベートの悩みまでを受ける制度を作りました。
夢親制度はすでに10年ほど続いており、会社が昼食会を主催するなどして新人が打ち解ける風土を醸成させています。

3.取り組みにあたって工夫したこと

さらに、新入社員が悩みを話すにあたって心理的なプレッシャーを減らすために、直属のリーダーが親代わりになっていたものを、直属でない先輩に任せるよう制度を改善しました。

他にも年度ごとに品質や生産性向上、安全対策などの目標達成率と過程を表彰する「課題ラリー」を実施しています。樋田社長は日刊工業新聞の取材にて「(夢親制度によって)自分たちで工夫する面白みを味わっている点も、離職率低下につながっているかもしれない」とおっしゃっています。
育成制度をひと工夫することによって、さらにより良い人材の育成に取り組んでいます。

4.成果

夢親制度によって新卒大学生における3年以内の離職率は、大学卒が1%未満で高卒でも3%以下に留まり、着実に成果を残しています。
夢親制度は新入社員がつまづきを乗り越える面白さを実感でき、人手不足の軽減や会社の成長にもつながっているそうです。
樋田社長は同新聞社の取材で「昔は離職率が高かった」と振り返りますが、「最近は『職場の先輩が優しい』という声も聞く」と述べています。

事例4 カネテツデリカフーズ:マンツーマン制度

カネテツデリカフーズは1926年に創業した、かまぼこやちくわなどの魚肉練り製品の食品メーカーです。

先輩社員とのマンツーマン指導の取り組みを行っている企業は少なくないと思いますが、その中でもカネテツデリカフーズは、新人と先輩が共同で目標設定を行うことを大切にしている会社です。

同事業の取り組みが掲載された厚生労働省が発行する「若者が定着する職場づくり取組事例集」と、産経新聞社が運営するニュースサイト「産経WEST」より、ご紹介します。

1.離職率に関しての悩みや問題意識

新入社員の指導や育成は「先輩社員の仕事を見て覚える」という社内風土によって、2つの大きな課題が出ていました。

1つは先輩社員が全新入社員に合わせた的確な指導方法やノウハウを説明するスキルを身に付ける機会が少なくなったこと。
もう1つは、多忙な先輩社員や管理職に遠慮して新入社員が相談をしずらくなってしまったことです。

2.具体的な取り組み内容

同社は新入社員の気質は時代によって変わると認識しました。そこで「先輩を見て学ぶ」という風土を改め、入社3年以内の離職率が50%前後の状態を解決しようと検討します。
こうして2017年に「マンツーマン制度」と呼ばれる新入社員指導員制度と教育研修の導入に至ります。

①新入社員指導員制度(以下、マンツーマン制度)

マンツーマン制度とは新入社員が入社してから半年間、新卒社員と年齢が近い入社2~3年目の若手社員を指導員にして教育をしてもらう制度です。

指導員となる若手社員は所属長に推薦されて、人事総務課が任命します。
制度の狙いは若手社員の指導能力養成と、新入社員の早期戦力化、双方のコミュニケーション不足を改善することです。
指導期間を「入社後の半年」にしたのは、半年かけて会社に馴染めればその後の会社生活がスムーズにいきやすいからです。

マンツーマン制度にあたる指導員は、新入社員と話し合って毎月指導計画書の作成をします。

指導計画書作成には指導員と新入社員のそれぞれ記述する項目があります。
指導員は①指導計画の達成状況、②指導して学んだこと、③引き続き新入社員に対して指 導が必要な点について記述します。

一方、 新入社員は①習得した技術、②苦労した点、③今後の目標、④後輩入社時の指導方針などについて記述します。
新入社員は月末になったら指導報告書をもとに、指導員と所属長からフィードバックしてもらい、指導期間が終わったら指導員が報告書を所属長と人事総務課に共有します。

②教育研修(フォローアップ研修など) 

フォローアップの研修内容は、指導報告書をベースに毎年変えています。

例えば、新入社員のコミュニケーション能力に課題が見られる場合は、コミュニケーション研修を強化します。
フォローアップ研修を含めた教育研修は原則として毎月実施しています。併せて人事面談も行って新入社員の近況を把握しています。 

教育研修はじっくり時間をかけて行うため新入社員の記憶に残りやすく、何をやるべきかが明確になります。また、教育研修は先輩社員としても「教えること(マネジメント)の難しさ」や「自分の知識が足りないところは他の社員が補ってくれる」などの、管理職研修や社内コミュニケーションの活性化にも貢献しています。

③その他の施策

同社では月1回、労使協議会を開催して会社方針や人事方針、労働組合からの要望について議論を行っています。労働組合との議論を通じて、 職場環境や労働条件(両立支援、手当など)の改善を進めます。

また、入社予定の学生に内々定を出した後、必ず面談を行って入社の意思確認やミスマッチの有無を確認しています。そのため、同社の内定辞退率は極めて低いそうです。

3.取り組みにあたって工夫したこと

社内では「若手社員の指導能力向上」と「新入社員の早期戦力化」という目的が共有されていたからこそ、制度と施策の導入はスムーズに進んだのです。

指導員を選定する基準も新入社員に近い年齢でかつ、過去に指導員経験のない社員にするように心がけていました。
ただし、部署によっては同じ若手社員が2~3回指導員を担うこともあります。同社は正社員比率が高く定期的に新入社員を採用しているので、指導員候補の人材確保は滞りなく進んでいるようです。

4.成果

制度導入前は新入社員の3年以内の離職率が50%超だったのが、制度後はわずか10%前後にまで激減しました。

さらに、同社の採用人数も一変しました。
それまで50人採用して3年で20人程度残るかどうかだったのが、ここ数年では6~7人を採用して3年で1人退職するかどうかにまで改善されたのです。
制度後のアンケートには現場から効果があったという声が多く上がっています。

指導員からは「分かりやすく教えることの難しさを学んだ」、 「分かったつもりだったけれど、自身が曖昧だった知識を教えることで整理できた」という意見が寄せられています。

一方、新入社員からも「年齢が近い先輩なので、今の段階で学ぶべき事を教えてもらえる」、「2年目に入った後、次の新入社員を教えられるようにもっと頑張っていきたい」といった声が寄せられています。

制度と教育研修は「中間管理職の育成研修にもなっている」と新人・若手社員両方の育成効果があったそうです。さらに、「個々の知識が足りずに十分に教えられないところは、自然と周りの従業員が補ってくれた」と、組織全体のコミュニケーションの活発化にもつながり、役職関係なく新入社員を育てる考えに基づいて、徹底的に教育するという風土に変わっていきました。

他社の離職対策事例から自社に合うものを検討する

社員の定着率を上げる取り組みをしている事例は、企業の規模問わずたくさんあります。一言で社員の定着率の向上と言っても、各企業によって様々な取り組みがあることがわかります。

今回の記事で紹介した事例では、様々な取組によって社員の定着率や生産性が向上しています。離職率の改善を目指すのであれば、自社の問題点を洗い出してから事例を探しましょう。

それでも、何から取り組んだら良いかわからないという企業の方もいると思います。カイラボでは早期離職に関する現状把握から早期離職対策の立案、実行のサポートまでを一貫して行っています。離職率や社員定着率の低下でお困りの企業様は、ぜひお問い合わせフォームからお尋ねください。

投稿者

佐藤絵梨
佐藤絵梨

Webライター
「自分と他者の感覚の違いを言語化する」をキャッチコピーに、カイラボ以外でも発達障害におけるコミュニケーションの生きづらさをテーマに活動中。

カイラボのライターを始めたきっかけは、仕事や職場環境においてミスマッチな会社で働いてきたことです。
私は入社をして体調が悪くなって辞めるという負のループを繰り返してきました。
これまでの経験からミスマッチを防ぐ方法の一つに、適切な場面で助けを求めるために感情の言語化をすることだと思っています。
本心を言わずに退職する若手社員や改善の仕方がわからない管理職に向けて、ミスマッチを減らすためにカイラボの思いを伝えていきたいです。